◆スポーツ医科学◆
第3回 血尿
(会報誌 第18号より)

 血尿とは、尿に血液が混じる事で、目で見て明らかに赤いものを肉眼的血尿、顕微鏡的にしか見えないものを顕微鏡的血尿または尿潜血と言います。尿は左右2つの腎臓で血液からろ過されてでき、尿管という管を通って一旦膀胱に溜まり、尿道から体外に排泄されます。この過程を尿路といいますが、血尿は大部分この尿路から発生します。今回は主に肉眼的血尿とスポーツ、特にサッカーとの関係についてお話します。

 血尿の原因は
表1のように色々ありますが、スポーツ選手の場合、原因がはっきりしているのは外傷です。腎臓は身体の後ろ側、背中の両端にあり、また膀胱は下腹部にありますので、サッカーの場合ボールや相手の体が背中や下腹部に当たった場合に外傷が起こることがあり、そのときに血尿が出ます。ただ外傷以外の原因ははっきりしないことが多いのです。結石症のことはありますが、スポーツ選手は比較的若いので尿路腫瘍によることは珍しいと言えます。

 私は最近静岡、清水の泌尿器科専門の先生方にお願いしてスポーツ選手の血尿についてのアンケートをとりましたが、サッカー選手に血尿が多い事が分かりました。これはこの地域にサッカーが盛んだという特殊性もあるかも知れませんが、サッカーは球技であると同時に一種の格闘技でもあるので外傷が起こる確率が大きいのかもしれません。ちなみにキーパーはゴールポストでの接触事故が多く、以前Jリーグの某有名ゴールキーパーがゴールポストと接触し、腎臓破裂という重症を負い、片方の腎臓を摘出したこともありました。

 これは比較的特殊な場合ですが、私の印象としてサッカー選手に血尿が多いのは、例えば本人の気づかないうちに外傷していたとか、外傷以外の原因として、腎臓は身体の後側にあり、膀胱は前側にあるので、体をねじる事が多いサッカーでは腎臓周囲の血管がねじられて、うっ血がおこり其の為に血尿が出やすい状況が起こるのではないかと言う事ではないかと思います。Jリーグの有名選手に血尿が比較的多いのはそのような理由もあるかも知れません。

 とにかく血尿が出たり、健康診断などで血尿を指摘されたら一度は泌尿器科専門医を受診される事をお勧めします。

尿路(腎、尿管、膀胱、尿道)の
外傷、結石、腫瘍、炎症など
腎臓に特有な腎および腎周囲の血管の異常
突発性腎出血(原因不明の出血)
慢性腎炎などの内科的な腎疾患 など
全身性疾患の出血傾向など
(表1)

村上泰秀(村上クリニック)


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